平井堅『大きな古時計』がオリコン初登場順位一位を獲得することが話題を呼んでいます。9/9付オリコンウィークリーランキングでは以下のような順番になっているそうです。
このランキング、そろいも揃って数字も少なければ知名度もない。完全にCDを買っている人だけの閉じた世界を形成しているのです。もっと言うと、このすぐ下に浜崎あゆみがいるのですが、その曲名を知っていますか? 正直な話、普通の人が知っているとは期待できないのです。浜崎あゆみの曲でさえも。
かくいう私でも、この五曲は平井堅『大きな古時計』しか知りません。すっかり音楽の世界から遠ざかっていることを実感しています。
でも、この曲をはじめ、オリコン上位にはいるほどの曲であれば、発売前から買いたくてしょうがない人が数万単位でいるはずです。ミリオンを取った曲であれば、発売前から前評判も高いのが当たり前でした。それが現在は、口コミ以外に積極的に取り上げられた形跡がない曲が売れてしまうことが当たり前となってきています。
そう、アーティストとその固定ファンたちが、閉じた世界を形成しているのです。
J-POPとひとくくりでまとめられ出した時代、すなわち九十年代から2001年にかけて、CDを買う人たちはもっと開放的な時代でした。テレビの音楽番組が積極的にアーティストを取り上げ、それを見た人達が次々にCDを買っていくことでミリオンセラーを作り、そこからさらにコアなファンをつり上げていく、つまり、ある曲を買っていく人の中に「カラオケで歌うために買っていく人」「CDで聴くために買っていく人」「ライブに行くために予習しようと買っていく人」「すでにどっぷり浸かっている人」などいろいろな濃淡があり、それゆえに新旧ファンの対立あり、アンチ同士の対決あり、罵りあいあり、要するに「音楽リスナー同士の対話」がそこにはあったのです。
ところが、2002年になると、実力よりも実績でアーティストの格を決めていく傾向がいっそう強くなりました。さらに、テレビの音楽番組に出たからといって格が上がるなどと言うことはなく、むしろ、せっかく築き上げた地位を引きずりおろす企画が多数を占めるようになりました。
こうなると、テレビという「もっともアクセスしやすいメディア」が音楽にもたらす影響は悪いものばかりです。他のメディアは多かれ少なかれ閉じた世界を形成していますから、結果としてアーティストのファンはアーティストと閉じた世界を形成し、それ以外の人とはまったくコミュニケーションしなくなって当然なのです。実際、モーニング娘。のファンであることを他の人に話すことは、それ自体がカミングアウトの対象となっています。つまり、「モーニング娘。のファン」=「人に言えないこと」というイメージが成立してしまっているのです。
ところで、あなたはとなりの人に自分の音楽の好みを話したりすることはありますか? また、となりの人がどういう音楽を聴いているのか知っていますか? 仮にとなりの人が良く会う友達だったりしても、そんなことは余りしないでしょう。それから、自分が嫌いな音楽を聴いている人と議論したことはありますか? ネット上であろうと現実世界であっても、今さらそんなことをしようとすることなどまずありえないでしょう。
そして、出る曲出る曲みんな小粒になっていき、J-POP時代という幸福な時代は終わりを告げてしまったのです。
最初に出したランキングはまさにそのことを象徴していると言えるでしょう。
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